2011年12月17日土曜日

子どもと水、どちらを捨てるのか

(ちょっと過去の内容だけど。)

子どもと水、どちらを捨てるのか
ソマリアの大飢饉、食糧があっても餓死する実態
國井 修

私は今、7月中旬に国連が「飢餓(Famine)」宣言をしたソマリアで働いています。正確に言うと、ケニアのナイロビにある国連児童基金(UNICEF)ソマリア支援センターを拠点に、月の約半分をソマリア国内各地に出張しながら、ソマリア国内で展開している保健・栄養・水衛生支援事業の統括・管理をしています。
「飢餓」という言葉から多くの人は「食糧がないために人々が飢えて死亡している」状態を想像するのではないでしょうか。

実際に、今回の「飢餓」が宣言されたソマリア南部の2地域では多くの人々が飢えて死亡しています。「飢餓」を宣言する基準として、(1)栄養摂取が1人1日あたり2100キロカロリー未満、(2)5歳未満の子どもの中等度以上の栄養不良割合が30%以上、(3)死亡が1日1万人あたり2人以上、という3つの条件があります。

ソマリアでは2100キロカロリーどころか500キロカロリーにも満たない人はたくさんいます。子どもの栄養不良も50%以上のところ、子どもの死亡も「危機的」といわれる基準の5倍以上のところもあります。

ただし、(1)の条件は「食糧がない」ためではなく、「食糧があっても入手できない」「食糧があっても栄養不良が発生し、死亡数が増加する」という状況があることを知ってほしいと思います。




約20年間にわたる内戦、無政府状態

もともと荒涼とした半砂漠が延々と続くソマリアは雨が少なく、大部分の地域で年間降水量は平均500ミリメートル以下、中には100ミリメートル以下という場所もあります。雨季は4~6月と10~12月に2回。これらが人々の農業・遊牧による営みを支えています。

四季を通じて水が流れる川は、エチオピア高原から流れてくるジュバ川とシェベレ川のみで、ほかは雨季に短期間、時に短時間だけ水が流れる水無し川です。僻地の診療所などを訪れるとき、未舗装の道、4輪駆動車でこのような水無し川を渡るのですが、雨季に突然スコールのような雨が降ると、川に水があふれて渡れなくなり、数時間待っているとまた水が引けて渡れるようになります。水が引かずに夜を明かした人もいるようですが…。
旱魃自体は今に始まったことではなく、慢性的な旱魃はソマリア各地で見られていました。しかし、ここ1~2年の旱魃はひどく、それによって農業、遊牧への影響が強く現れました。降雨量の低下については、人口や家畜数の増加により、潅木の過伐採、過放牧などが進み、砂漠化が進んでいることも影響しているとも考えられています。

この旱魃で確かに農作物が枯れ、家畜が死に、6割以上が遊牧生活、その他も零細農業を営んでいる人々の生活は厳しくなりました。しかし、多くの国ではそれに対して備蓄された食糧やその輸入で急場をしのぐことができます。

しかし、この国では食糧の計画的な備蓄も輸入も、約20年間にわたる内戦、無政府状態のため機能せず、近年の石油の高騰による物価上昇も含めて、ソマリア国内に食料があっても値段が上昇し続け、多くの人々に買えなくなってしまいました。

例えば、主食の1つ「ソルガム」の価格が3倍に跳ね上がったところもあります。遊牧民は旱魃で生活の糧であるラクダやヤギを失い、食べるものがないため、市場に行っても高くて買えず、労働で稼ごうにも職がないという状態なのです。
こんな国には国際社会から支援がきます。ユニセフもこの飢餓が発生するずっと前から支援してきました。しかし、ここで20年以上続く内戦・内紛で、援助を送り届けることが困難な場所があります。

その結果がこのような飢饉です。


男性は農業や放牧のため村に残る

7月20日に国連がソマリア南部2地域の飢饉を宣言しましたが、8月には5地域に広がっています。

私も首都モガデシュ、ケニア、エチオピアの国境地帯など、様々な地域を国連の小型機で訪れ、多くのエピソードを聞きました。家畜をすべて失い、このままでは餓死すると思い、着の身着のままで逃げてきた一家。300キロメートル以上の道のりをひたすら歩き続け、10人いた子どもは栄養失調や下痢症などで、1人また1人と死に、途上で4人が死にました。

またある母親は、片手に子ども、もう片手に水容器を抱えながら2週間以上歩き続けたました。疲労と飢えで力尽き、どちらかを捨てる覚悟をし、悩んだあげくに水容器を捨てましたが、途中、水のみ場もなく、子どもは脱水で死亡してしまいました。

これら国内避難民また難民の8割以上は子どもと女性。男性はどうしたのかと聞くと、雨が降ったらすぐに農業や放牧ができるように村に残っている、または、武装勢力に徴兵されないように逃げた、徴兵された、内戦で殺された、などの答えが返ってきました。女性と子どもだけで荒野を何日も歩くことの危険性。脆弱な立場の彼女らは暴行や搾取の対象となりやすく、実際に痛ましい話を聞きました。




必要なことは何か

これに対して必要なことは何でしょう。まずは命を救うための食料、水、医療です。特に、ユニセフでは、井戸掘り、浄水剤配布、トイレ設置などにより安全な水と衛生を提供すること、治療および補助栄養食品により栄養失調を改善すること、ワクチンや経口補液を含む必須医薬品を提供し、地元のNGOなどと協力しながら医療サービスを子どもたちに届けること、などを優先して支援しています。

現在、ソマリア国内には370万人、全人口の半数が支援を必要とし、うち半分は子どもです。栄養失調は45万人、うち19万人には直ぐに治療栄養を開始しなければ命を落とす危険性があります。緊急かつ大規模なオペレーションが求められています。

これまで20機以上のチャーター便を含み、空路・海路・陸路あらゆる手段で必要物資をソマリア国内に送り込み、子ども20万人以上の治療栄養、200万人への予防接種、180万人への安全な水の確保などを進めています。これは様々な支援団体と連携・協力していかなければ短期間に実施することは困難です。

今、国際社会が力を合わせ、この難題に取り組む時だと思っています。




最後まで読んでくれてありがと~~~♪

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