2011年12月18日日曜日

ムスリムを受け入れることで企業も成長する

ムスリムを受け入れることで企業も成長する
日本の会社で働くムスリム2
佐藤 兼永

古河電気工業の人材育成部で外国人の採用に携わる関尚弘さんが、留学生向けの会社説明会で初めてソリハさんに会った時、有望な候補だと直感的に思ったという。古河電工は海外での売上比率を将来的に50%まで引き上げる計画を実行している。このため「会社に来てほしい」と思わせる優秀な留学生に出会った時には「入社してくれるよう、なりふり構わず」働きかけるようにしている。

 ソリハさんとは『The Goal』という本の話で意気投合し、来てほしいと思った。会話のなかで彼女の宗教が話題に上ることはなかったが、インドネシア出身でスカーフを被っていたことから、恐らくムスリムなのだろうと想像はついた。

 関さんはこう振り返る。「『宗教が原因で何か問題になる事はあるのかな』と思ったことはありました。何が起こるか全く分からなかった、というのが正直なところです。でも彼女には来てほしかった。だから彼女に来てもらうという前提で、何をすればよいのかを調べていった」。

分からないことは聞くのが一番
 ただ、少しだけ自分で調べた段階で、彼女に直接聞くのが一番だと気づいたという。

 「調べても分からないし、既に何回か会って話もしている。分からないことは分からないと、聞いた方がよいと判断しました。彼女に聞いたら、きちんと全部話をしてくれました。こちらの不安にも全部答えてくれて」(関さん)。

 関さんによると、疑問を解消するためにソリハさんと交わしたメールの数は、彼女が入社するまでに200通近くに上ったと言う。例えば、「1日5回の礼拝はきっかりと決められた時間にやらないといけないもの」と思っていたが、実際は、ある一定の時間内の都合の良い時にすませればかまわないと知った。公園でも人目を気にせずお祈りするソリハさんを見て、礼拝という行為が彼女にとって当たり前で自然の行為だと気づいた。その結果、面接が最終段階に差し掛かった頃には、長時間拘束しても問題ないように、彼女のために礼拝用の部屋を用意するようになった。

 ソリハさんにしてみれば、このような、関さんの「なりふり構わない」姿勢のおかげで、イスラム教に対する会社の理解度を知ることができた。

 「どちらかと言うと、人事の関さんが積極的に色々提案してくださいました。お祈りはいかがですかとか、お祈りの場所はどこにしますかとか」(ソリハさん)。

スカーフが機械に巻き込まれてしまったら…
 関さんが最も不安を抱いていたのはスカーフのことだった。
 スカーフを被ること自体は、信仰の徴ということもあり、全く問題視しなかった。しかし古河電工は製造業だ。ソリハさんがスカーフ姿で工場に出向いた時のことを考えると、安全面に不安があったという。

 「設備のそばを通った時に、スカーフが機械に巻き込まれてしまったら怪我をする。そんな事態をリスクとして心配しました」(関さん)。

 そこでインドネシアにある子会社の社長と電話やメールで相談した。だが、ソリハさんを工場見学に連れて行くことで、不安は自ずと解消された。頭部にゴムが付いたスカーフで現れたソリハさんは、工場に着くとスカーフの上から上着を着込んだ。頭部はゴムひものおかげで風に煽られることはなかった。スカーフの裾も上着の下に入っているので機械に巻き込まれる心配はなかった。

 会社勤めのムスリムと話をしていると、「日本人は宗教を会社に持ち込むことを嫌がる」という発言を聞くことがある。彼らに「会社への取材を承諾してもらえるか」と訊ねると、「宗教という個人的なことで会社に迷惑をかけたくない」という言い回しで断られることがたびたびあった。



しかし古河電工内でそのような批判が起こることはなかったと関さんは言う。「そもそもそのような批判が起こることを想定もしなかったし、オフィス内での礼拝の是非について議論が起きることもなかった」(関さん)。ただ、ソリハさんがどの部屋で礼拝するかを、メールを通じて人材育成部内で情報共有した。

 「当社は、(文化が違うことや、日本人ではないことで起こりうるコミュニケーション・ギャップを)理解してくれる人が多い会社です。それに、彼女であれば、批判する人は居ないと思っていましたから。彼女の行動なり振る舞いなり仕事の仕方を見れば、そんな人は現れるはずがないと確信して採用したので。偉そうに聞こえるかもしれませんけども、それだけの自信を持っていましたから」(関さん)。

ムスリムと共存することで企業も成長する
 とはいえ、彼女が入社した時に周りの人がどう見るだろうというのを気にしなかったわけではない。ただ、それが会社にとって問題になるとは思わなかった。「最初は、やっぱり気にする人が居るかもしれないし、違和感を覚える人がいるかもしれない。けれども、じきに慣れるだろうと思いました。その慣れが、この会社に必要なんだと考えました」(関さん)。

 関さんは、このような慣れは、ソリハさんのために必要なだけでなく、古河電工が国際化していくために乗り越えなければならないハードルの一つなのだと捉えた。

 「彼女がお祈りだと言って席を立った後に、彼女宛てに電話かかってきたとします。『ソリハは居ますか』。『いや、今ちょっとお祈りしております』という対応が普通にできるようになったら、イスラム教の他のお客さんとも何の違和感もなく話ができるはずなんですね。それが大事なことなんです」(関さん)。

グローバル企業は必然的にムスリムを受け入れる
 ソリハさんは、日本の会社に勤めるムスリムとして、恵まれているのだろうか? それとも、日本企業全体において異文化に対する許容度が深まり、異なる文化的・宗教的バックグラウンドを持つ社員を受け入れることが、当たり前になりつつあるのだろうか?

 ソリハさんには、日本の会社に就職する前からスカーフを被っていたインドネシア人の先輩が10人ほど居る。彼女らの就職先は金融機関からメーカー、サービス業まで多岐にわたる。そのうち誰一人として、就職の際にスカーフを外すように求められた人は居ないという。

 「グローバル展開している企業であれば、(ムスリムであっても)特に問題ないと思っております。そもそも外国人を国内で採用する理由もグローバル展開にあるわけなので。国内で、特に海外に展開する必要のない企業であれば、そもそも外国人を採用する必要はないでしょう」(ソリハさん)

日本人ムスリムに対する許容度は高まっているのか?
 ただ、外国人のムスリムはその習慣の違いを認めてもらえても、「日本人ムスリムが認めてもらうことは難しい」と考えているムスリムは多い。ソリハさんも外国人に対する対応と日本人に対する対応に差があると考えている。

 「私はたぶん外国人なので、ヒジャーブを被ることが許されているのだと思います。一つの外国文化だと考えてもらえる。しかし、日本人ムスリマ(女性のイスラム教徒)は、プライベートなことは――宗教もその一つ――職場には持ち込めないといったことがあると伺っています」(ソリハさん)。

 ソリハさんは、日本人ムスリマで、出産して仕事を辞めるまでスカーフを被って働いていた人を一人だけ知っているという。その人も、海外でも事業展開を行う会社に勤めていた。









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